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サンズとセルツとアイマスと

isiahthomas

 〜NBAにおける「中流階級」の生き方〜

先週の怒濤のトレードデッドラインに関する記事でおもしろいと思ったものがあったのでおおまかに訳してみました。元の記事はこちら

現在のNBAでは中途半端なチームが一番良くないとされている。プレーオフに出るか、底辺に居座ってドラフトで良い選手を取るか。「今勝つ」か「今負ける」か。各チームのトレードやオフシーズンの動きを見ていても、このどちらかをやっている場合が多い。わかりやすい例が2013年のドラフト当日のシクサーズとネッツ間のトレードだ。シクサーズのGMサム・ヒンキーはオールスターであったJrue Holidayを出してドラフトピックを2つ得た(のちにこれがNerlens NoelとJoel Embiid になるが、ふたりとも1年目は怪我で全休)。 一方でネッツのGMビリー・キングはドラフトピックをたくさん出して「今勝つ」ことを期待してベテランのガーネットとピアースを連れてきた。2年近くたった今、両チームにとってこのトレードが成功だったとは言い難い。ネッツに至ってはガーネットもピアースもいなければ、トレード以前と比べてよりチャンピオンシップに近づいたとも言えない。シクサーズもノエルやエンビードに関しては未知数だ。

ところがシーズン中盤に8~10位にいた場合はどうだろう。チームをそのままいじらずに徐々にプレーオフ圏内から遠ざかるのを黙って見るのか。それとも失敗を覚悟の上で思い切ってトレードをし、なんとか上位に食い込もうとするのか。先週のトレードデッドラインでふたりのGMがまさにそのジレンマに真っ向から挑んだ。

木曜日のトレードデッドラインを目前に、サンズのGMマクドナーは29-25というまずまずの成績であったチームの解体に取りかかった。サンズはこの時点で西カンファレンスの9位で、10位のOKCをわずか0.5ゲーム差でリードしていた。数日前にサンズのフロントに不信感を抱いていることを打ち明け、トレードを希望したドラギッチをマイアミに送るまでは皆も予想できた。急なトレード要求だったにも関わらず、ドラギッチを無事ダニー・グレインジャーといくつかのドラフトピックに変えることができた。チーム一番の選手とも言えるドラギッチを失ったとはいえ、プレーオフの可能性がないとも言えないメンバーがまだ残っていた。

ところがマクドナーはそこで終わらなかった。さらにマイルズ・プラムリーとアイゼア・トーマスをトレードしたのだ。プラムリーのトレードははまだ理解できた。代わりにバックスからドラギッチの穴を埋めるべくブランドン・ナイトを手に入れた。問題はトーマスだ。トーマスは4年目、26歳のスコアラーだ。ゲームにも無駄がなく、契約も4年$27ミリオンとかなりお得だったはず。トーマスのようなスコアラーの良いところはどんなチームのシステムにもフィットするところだ。たとえサンズの実験的な3ガードが失敗だったとしても、安い契約でアセットにもなり、今勝つことに貢献できるトーマスを手放したのはなぜか。もちろんその本当の答えはチームの関係者でない限りわからない。でも外から見るとサンズはこれ以上今季の勝ち星を増やすことを優先しないことを選んだように見えるのは明らかだ。ブレッドソーとナイトの息が合うまでに少し時間がかかるかもしれない。ベンチスコアラー役がトーマスからソーントンになったのも格下げだ。でもどうせ8位という中途半端な順位なら思い切ってこのようなリスクを取って良かったのではないか。極端にタンクせず、2016年のキャブズの1巡目というアセットも手に入れ、さらに今ちゃんと見応えのあるチームだ。

一方、セルティックスはオールスター休みの時点で20-31とサンズより成績は悪いが、東カンファレンスにいるためプレーオフに行ける可能性はサンズよりも僅かにあった(ジョン・ホリンジャーによるとセルツがプレーオフに進む可能性は39.7%、サンズは20.0%だった)。でもセルティックスのGMエインジは仮に8位でポストシーズンへ進んですぐにアトランタに敗退するよりも、アセットを増やして今後のために動くことを考えただろう。実際にチャンピオンシップをもたらしたチームを2013に解体した後、フィットするチーム作りよりもひたすら将来に向けてアセットを集めてきた。トーマス獲得の紀元はまさにその2013のトレードにさかのぼる。ピアースとガーネットを引き換えにセルツは$10.3ミリオンのトレードエクセプションをネッツから得た。これをすぐに使わずに待った結果、2014夏にレブロン獲得のためにキャップスペースを空ける必要があったキャブズからソーントンとタイラー・ゼラー、そして前述の2016年の1巡目ピックを得ることができた。そして先週、そのドラフトピックとソーントンがトーマスになった。つまり2年の間にいわば借用書ひとつで若きセンターであるゼラーとトーマスを手に入れたことになる。(いよっ!買い物上手!)

ではセルティックスはどうなるのか。実際はまだプレーオフからは遠いかもしれないし、あと数年はこの中途半端な状態が続くかもしれない。でもエインジは着実に使える選手を獲得し、将来的にも希望を残し、さらに今季もそれなりに見れるチームだ。そこがヒンキーとは違う。

キングもヒンキーも「今勝つ」か「今負ける」かのどちらかを選んだ。キングの場合は「今勝つ」の「今」はせいぜい今シーズンまでだった。「今負けてる」ヒンキーにとっては現実的に見てあと5年ほどしないと勝つことはできないかもしれない。このように「中途半端」から抜け出そうと極端な選択をした場合の問題点は、計画が失敗したときの立て直しが極めて難しいところだ。ひとつでも上手くいかないことがあると、全計画が失敗に終わることになる。

マクドナーとエインジは極端な動きはせずに微調整をしながらリーグの中流階級として生きる方法を選んだ。結果的にはっきりと将来の予定を決める必要もないし、フレキシブルでいられる。こういうチーム作りの方がGMとしても面白いだろうし、ファンにとっても悪くない。実際にサンズとセルティックスがプレーオフに出られるのはいつになるのか、それは分からないでもその不確かさこそがゲームを見る面白さでもあるのではないだろうか。

via Evans Clinchy (@evansclinchy), Hardwood Paroxysm (@HPbasketball)

photo byMark J. Rebilas-USA TODAY Sports

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